ヘルメット内部に入ってくる衝撃エネルギーを受け止め、衝撃を吸収する処理(衝撃吸収性能)と、衝撃エネルギーに対してヘルメットを動かす事により、内側に入れないようにする「かわす処理」(かわす性能)。いかなるヘルメットでも、この2つが機能して頭を護っています。
衝撃吸収性能は、限られた容量で処理しなければならないので、その能力を超えては、頭は護れません。衝撃吸収性能を超えるような大きな衝撃に対しては『かわす性能』が働かなければ頭を護ることができないのです。
規格さえクリアすれば、フォルム、強度、収納物等多くの選択肢ができる。しかし、それらは「かわす性能」を妨げる可能性があります。
アライは長い歴史を通して、実践に基づいた改良を積み重ねて来ました。それは衝撃吸収性能だけでなく、「かわす性能」の進化の積み重ねであります。
世界中のメーカーで、「かわす性能」に重きを置き、頭を護るヘルメットを追及してきたアライのようなメーカーは見当たらなくなりました。フォルムひとつでも、その違いは一目瞭然です。 走行中に万が一転倒した場合、ヘルメットは路面に対し90度の垂直にぶつからず、斜め方向から衝撃が加わるケースが一般的です。そして、斜め方向から衝撃が加わった一瞬の間に、ヘルメットと障害物はすべりながら衝撃ポイントを移動させています。
そのフォルムは、現実の衝撃から助かった実績を積み重ね、『かわす性能』を進化させてきました。その結果、卵に近いフォルムになったのです。衝撃吸収性試験をパスするためのフォルムではありません。
衝撃吸収性試験の中には、決められた箇所をテストする規格、あるいは任意のあらゆる箇所を選んでテストする規格など、様々あります。
定められた箇所、あるいは任意の箇所、厳しい角度など、丸く滑らかなフォルムでも、技術がなければ、特定の箇所に厚みが必要となり『かわす性能』に適切なフォルムを維持することはできません。
アライのフォルムは、あくまで『かわす性能』を追及しています。その上で、厳しい規格を取得する。その内側には、目に見えない技術と工夫が積み上げられているのです。
▼ヘルメットの現実での転倒痕
ヘルメットの規格試験で代表的なものが「衝撃吸収性試験」。ヘルメットが障害物に直撃した場合の数値を調べます。
この試験での衝撃痕は、垂直に受け止めた痕跡が残ります。
一方、現実の転倒痕は、それとは異なる斜めからの衝撃を受け止め、ヨコ方向に流れる痕跡が見て取れます。
アライは護る性能で世界一を目指すと決めて以来、シェルの強度と軽さの追及には心血を込めた改良を積み重ねています。
- シェルの全数厚み二重検査
- 強度と軽さを両立させたcLc構造の開発と進化
- 強度を高めるための通常ガラス繊維の6倍コストがかかるスーパーファイバーの採用
- シェルを樽の箍(たが)の用に強化し、開口部へのクラックを予防するスーパーファイバーベルト(SFB)の開発
- ブレンド樹脂の進化
こうした代表的な例は氷山の一角で、各モデル・サイズごとに、ライナとの組み合わせにより、さまざまな細かな改良を積み上げ、『かわす性能』を最大限発揮するシェルを生み出して行くのです。
たとえMotoGPライダー用であっても、帽体二重検査に合格した中から無作為に選ばれます。MotoGPライダーをはじめとするプロライダーから得たデータを、そのまま市販品に素早くフィードバックできます。
剛性の高いファイバーの間に、弾性に富み比重の軽い特殊ファイバーを、挟み込むようにして成形するcLc製法。同じファイバーだけで造られたものよりも、20%以上軽くできるのです。
cLcの基本構造は、1970年代後半、アライが強さと軽さを両立させたヘルメットをつくり上げようと模索して生まれたもので、世界を驚かすような製法です。
それは、世界中のレーサーに信頼されていた他ブランドのものより、200g以上軽いものを実現しました。現在のSNC(ネット構造)は、当時より遥かに剛い強度を有しながら、軽さというと
帽体単体では当時のcLcより200g以上。現在のPB-cLcは700g台後半、PB-SNC²は700g台前半で、その差は70g位。PB-SNC²を採用するRX-7Xは、それだけ特別なシェルが使用されているのです。
樽の箍(たが)のように用いるスーパーファイバー制ベルトで剛性を強化したSFB(Super Fiber Belted)プロテクション。強い衝撃を受けた際に発生しやすいクラックも、この特殊ベルトが広がりを抑制し、 『かわす性能』を持続させます。スーパーファイバーベルトは、シートベルトと同じような編み方ですが、幅、厚みなどさまざまな種類のものの中から個々のモデルに合わせ、最適な物にするため、社内生産しています。
シェルは、強い衝撃に対峙した時、固いだけじゃダメ。剛さの他に、粘りも必要。柔軟性も兼ね備えることで、限界値まで耐えうる。
それが、アライのシェル。
『かわす性能』に不可欠のシェルの強度。それを引き出すためには、様々なノウハウとこだわりが詰め込まれています。シェルそのものが、最も大きな「アライの違いです。」
●主原料のスーパーファイバーは、通常のグラスファイバーより、引張強度・圧縮強度が30%も高い特殊なファイバー。 使いこなせば、ヘルメット帽体素材として最適ともいえる効果を引き出せる。 コストは通常ファイバーの6倍と高いものだが、その性能を発揮させるには、高度な技術も不可欠。
●スーパーファイバーは、ヘルメット原料となる仮成形品(プレフォーマ)だけでなく、補強材として、マット、クロス、そしてスーパーファイバーベルト等、 さまざまな加工方法により、部位ごとに最適な強度を引き出している。
●最高のシェルのために、数十種類の最高の材料。 プレフォーマ、スーパーファイバー材料、ARマット、そのすべてが、重量・厚みなど全数厳格管理。さまざまな材料は、金型に丁寧に配置し、手作りで成形していく。 それには熟練の技術が不可欠で、アライでは《シェル・エキスパート》としての認定制としている。
●シェル成形に不可欠な樹脂は、さまざまな種類のものをブレンドし、最適な強度を引き出すようにしている。 現在はF1用特殊カーボンヘルメットに使用される、接着性の高い特殊樹脂を改良。 使用可能時間が短く、管理が困難ではあるものの、最高の強度を引き出すために、あえて使用している。
アライ独自の多段発砲一体成型ライナは、衝撃を受ける面積により高度を変化させています。この技術により、「かわす性能」に優れたフォルムを作ることができます。
衝撃ライナに使われる発砲スチロールは粒の連続で成形され、その一粒一粒が順番につぶれることにより、高い衝撃吸収を発揮します。 一体成形多段発砲ライナは、硬度の変化に途切れることなく、衝撃を連続して受け止めることができるので、組み合わせ式のライナよりも、実際の衝撃で有効に働くことができるのです。
シェルと多段発砲ライナの組み合わせは、無数の種類があります。アライは各モデル、サイズ毎に、最適なシェルの構造とライナの細かなセッティングを繰り返し行い、できる限り軽く、コンパクトでありながら、『かわす性能』に優れたヘルメットを作り上げています。
多段発砲ライナは当初、前頭部に設けられました。面積が狭い前頭部は、衝撃を広く分散できないため、広い面積で受け止めるには好都合な柔らかめのライナではつぶれきってしまします。 前頭部ライナの下側に、硬めのライナを組み込めば、それが支えとなり、必要以上に厚みを取らなくとも、良好な衝撃吸収性能が維持できるのです。
極端な前傾姿勢のMotoGPライダーでも、かぶり角度の変更なく、ノーマルサイズが使用されているのです。
世界で唯一、アライだけのMDL技術(Multi Density Liner)。硬度の違う発砲スチロールを部位毎に細かくチューニングしている。
ベストなプロテクションを引き出すため、モデル毎のみならず、サイズ毎にも細かく硬度を設定している。
半球形アンビルと平面形アンビルでの衝撃吸収性試験に真摯に取り組めば、頑丈なシェルと比較的柔らかな緩衝ライナの組み合わせが必要となります。
また、耐貫通性試験によっても、シェルの強度が確認できます。シェルの強度は、「かわす性能」に不可欠なものです。それを確認するためにも、スネル規格を採用しています。
ECE規格にはない、衝撃吸収性試験に使われる半球形アンビル。平面形アンビルとは異なり、点での衝撃になるため、シェルの強度が試される。
3kgものストライカを3mの高さから落下させる「耐貫通性試験」。路上や路面の突起物やオートバイのステップなど尖ったものを想定し、帽体強度を調べます。
JIS規格では、3kgのストライカを2mから落下させます。しかしアライでは、「かわす性能」には帽体の強度は不可欠と考え、JIS規格品でもスネル規格と同様な3kg・3m試験に受かるように設計しています。
規格に要求されないことも、「かわす性能」のために、取り入れているのです。
ヘルメットの最も大切な機能は頭を守ることですが、その性能は外観からはわかりません。そこで、安全の目安となるのが規格ラベルです。
日本の場合はPSC、アメリカではDOT、欧州ではECEといったように、世界各国でそれぞれの安全基準を設けています。オートバイ用ヘルメットは、その基準をクリアしなければ販売することができません。
販売基準とは別の、さらに厳しい任意の安全基準。それが、『スネル規格』です。アメリカのスネル財団により定められたこの規格の要求事項は、世界で最も厳しいとされています。
前頭部から側方にかけての形状はより滑らかな曲面を維持しており、シールドもシェル同様に『かわす性能』を最大限に発揮するための形状の一部だと考えています。
丸く滑らか、かつコンパクトなヘルメットの形状を維持するために曲面を変化させ、側頭部まで回り込んだ形状のシールドは、他とは違う大きな特徴です。
前頭部から側頭部にかけては、転倒時にヒットする可能性が高い部位であり、規格をパスしてもなお、実際の衝撃から頭を護るためのヘルメットづくりを目指すアライにとっては、シールドの形状ひとつとっても ライダーの頭を護る要素と考え、設計を行っています。
VASシールドで採用したインジェクションシールドの設計・掘削は一般的な一定の曲面でつくられたシールドよりも遥かに難しく、その金型制作には非常に高い技術が求められます。
これまでアライが熱曲げ加工のシールドをインジェクションシールドで実現することは難しかったからですが、掘削技術の向上と共に、視認性も優れ、「かわす性能」を削ぐことのない、アライが理想とする インジェクションシールドが完成されたのです。
アライの『かわす性能』へのこだわりは、シールドにも行き渡っています。
チャート①:メジャーによる測定方法
最重要!!周長が基本となるのでしっかり計測すること!
眉毛の上、おでこの一番出ている部分(眉毛から人差し指1本分ぐらい上)から耳の上に回し後頭部の一番高い位置を通って1周するように測ります。
(頭の周長の一番長い部分がヘルメットの内径の一番広いところに合わせるのがサイズ選定の基本)
この時、きつめに測った時と少し緩めに測った時、両方の数値を参考にサイズを選定します。
例:きつめ57cm 緩め58cmの場合、推奨サイズは57-58サイズ
チャート②:アライフィッティングスケールでの縦長・横長の計測
アライフィッティングスケール(AFS)で頭の縦長/横長を計測する際は、定規が斜めにならないように真っすぐ頭の一番張っている部分を計測します。
>>アライフィッティングスケール(AFS)pdfはこちら
自ら開発したFRP製のシェルとEPSライナの組み合わせは現在でも計測されています。
バイク乗りであった創業者の新井廣武氏が自らの頭を護るために、試乗や規格が存在しない時代に日本で初めてバイク用ヘルメットをつくり、現在も規格をクリアすることが目標ではなく、真に頭を守るためのヘルメットつくりを続けています。